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校長室だより ♪校長室カンタービレ♪ 第41号が発行されました

♪校長室カンタービレ♪ 第41号

平成30年10月25日

 皆さんは、「庭園」と聞いてどのような景色を思い浮かべますか。「庭園」とは、見て歩いて楽しむために樹木を植えたり噴水・花壇を作ったりなど、人工的に整備された施設のことを言います。
島根県には有名な庭園がいくつもあります。たとえば、松江イングリッシュガーデンは、イギリスの長い庭園史の中でも19世紀中ごろから20世紀初めにかけての代表的な庭園様式を採用して造られており、人工的なフォーマルガーデンと自然の風景をそのまま生かすことを目的としたインフォーマルガーデンの異なった二つの区画が巧みに配置されています。多目的ホールでは演奏会なども企画され、私も何度か訪れたことがあります。また、日本庭園として、松江の由志園、皆美館、平田の本陣記念館、そして安来の足立美術館など、多くの素晴らしい庭園が存在します。特に足立美術館の庭園は、アメリカの日本庭園専門誌「ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデニング」で、900か所以上の日本庭園の中から15年連続日本一に選ばれています。また、フランスの旅行ガイドブック「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」で、山陰では唯一となる最高評価の三つ星を獲得しています。このような評価もあり、現在では外国からの入館者が大幅に増加しているようで、マスコミでもたびたび取り上げられるようになりました。広大な敷地に「枯山水庭」「白砂青松庭」「苔庭」などの6つの庭があり、日本庭園における造園技法の一つである借景の手法もとられ、庭園全体が一つの絵画のような美しさを作り出しています。若干入場料が高い気もしますが、この美しさを保つための専属庭師や美術館スタッフの毎日の努力を考えれば、納得せざるを得ません。それほど価値ある庭園なのです。
なんだか観光案内のようになってしまいましたが、ここからは、「日本の美意識」について述べます。
日本庭園様式を代表するものとして、足立美術館にもある「枯山水」を挙げることができます。枯山水は、水を一切使わずに石や砂のみで山水を表現する様式です。つまり、石を山のように、砂の模様を水の流れのように見立て、見る人にあたかも水が流れているかのように感じさせる手法です。この「見立て」という手法は、落語で扇子を箸の代用として使うなど、日本独自の芸術表現の一つと言われています。「見立て」を使って、水がないのに水を感じさせる、水を感じたいからあえて水を使わない、つまり「水」を引き算することによって何もない空間・無の状態・余白を生じさせ、それを見る人の心で満たしていく。これが日本の美意識であり、「引き算の美学」あるいは「余白の美学」であると言われる所以なのです。
日本には、装飾や無駄をあえて引き算し、余白を残すことで生まれる価値を大切にしてきた文化が残っています。しかし現代は、私も含めて、余白をどう埋めていくかという足し算の価値観だけで生活するようになっている気がします。日々の生活に追われている今だからこそ、余白に美を求める日本人の貴重な価値観を見直してみることが必要ではないかと、私は感じています。

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