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校長室だより ♪校長室カンタービレ♪ 第20号が発行されました

 

♪校長室カンタービレ♪ 第20号

平成29年12月1日

さて前号では、音は「振動」であり、空気などを介して耳に届くと書きました。では、空気のない宇宙空間では音は聞こえないのでしょうか。基本的には、振動を伝える空気が存在しないから聞こえないそうです。映画に出てくるド派手な音は、実際の宇宙空間では生じないらしいのです。

私は、本当の無音状態を経験したことはありません。音のない世界なんて想像すらできません。そして当然ですが、音楽は楽器や声を使って音を出し、それを聴く人の耳に届けます。でも、その常識を覆す作曲家が存在しました。それがアメリカのジョン・ケージという作曲家です。彼は、20世紀で最も影響力のある作曲家と評されています。

1951年、ケージはハーバード大学の無響室(周りの音を完全に遮断し、室内で発生する音も完全に吸収して無音状態にした部屋)に入るという経験をしました。その時彼は、完全に無音であるはずの空間で2つの音(神経系が働いている高い音と血液が流れる低い音)が聴こえたそうです。無音の世界においても音はどこまでも人を追いかけてくることに、ケージは相当な衝撃を受けたと言われています。

そして1952年、「4分33秒」という曲を完成させました。

この曲は全3楽章で構成されています。ところが楽譜には、それぞれの楽章にTACET(比較的長い休み)と記されているのです。つまり、4分33秒の間、1つの音も発せられることなく曲が終了するのです。実際に、同年8月、ピアニストのデヴィッド・チュードアによって初演され、当時は様々な批判を浴びたと言われています。

正直言って私には理解し難い世界ですが、音楽に関する新しい概念を創造したとして評価を得ているのも事実です。

ケージはこの曲について、4分33秒間の「無音」を聴くのではなく、4分33秒間の静寂な演奏会場で聴こえる人の呼吸やざわめきなど、普段は全く意識しない音に心を向けさせることを意図したと言っています。そして、会場内で起こる雑音も含めたすべての音が1つの音楽であり、演奏者ではなく聴く人を主人公とした音楽なのだと言っているのです。

ちなみに、なぜ4分33秒かというと、絶対零度(分子がまったくエネルギーを持っていない状態となる理論上の温度)がマイナス273度であり、4分33秒を秒数に直すと273秒となる、という説もあります。絶対零度の意味さえ私には理解できませんが、ケージがこのことを狙っていたかどうかも、まったく不明だそうです。

今回は、音楽は音を鳴らすという常識を覆した「無音の音楽」について紹介させていただきました。

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