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校長室だより ♪校長室カンタービレ♪ 第30号が発行されました

♪校長室カンタービレ♪ 第30号

平成30年5月1日

 前号で私は、東京メトロ車内におけるBGMを流すという試みに対し、積極的に賛成しないと述べました。閉鎖された空間である公共交通機関の中で、一人でも不快に思う人がいるとしたら、流すべきではないと考えているからです。

しかし、公共の場におけるBGMは、すでに確固たる地位を築き上げています。レストランや喫茶店などの飲食施設、スーパーマーケットなどの商業施設、そして病院の待合室やリラクゼーション施設など、BGMが流れていない場所を探すほうが難しいかもしれません。音楽の力を活用したBGMには、それだけ大きな効果があるという証明と言えます。そこで今号では、私も読んで納得した音楽心理学者であり音環境コンサルタントである齋藤寛氏によるBGMの4つの効果を紹介します。

1つ目、マスキング効果。ある音を別の音で隠す効果。たとえば、レストランなどの飲食施設で、調理場や空調の音あるいは別の客の会話を打ち消すためにBGMをかけ、耳障りな音を隠して居心地の良い空間を作るという効果です。

2つ目、感情誘導効果。音楽を聴いて感情を動かす効果です。たとえば、病院で患者の不安を和らげるためのBGMや、映像とともに音楽を流して感情を増幅させる効果などがあります。

3つ目、イメージ誘導効果。お店の雰囲気を明るくしたり、高級感を醸し出したり、子供向けの場所では楽しさを演出したりといったように、それぞれの場所が持つ視覚要素のイメージを、聴覚から受ける刺激で増幅させる効果です。

4つ目、行動誘導効果。感情に働きかけた結果、行動まで変えてしまうのがBGMの力です。たとえば、BGMのテンポを変えると、歩くスピードや食べるスピードが変わり、音量が大きいと声が自然に大きくなります。音楽の要素が変わるだけで人の行動は変わるということです。

私は、これらの大きな効果がBGMにはあるということを理解しています。また、音楽にはイメージや感情そして行動までも変えてしまう力があるということも、音楽を学んできた私はよく理解しているつもりです。ただ、現代においては、自然の音よりも人工的に作られた音の方が多く存在し、もしかしたら、その音・音楽に自分の感情がコントロールされているかもしれないと意識することも必要ではないかとも考えます。前号でも述べましたが、音楽を聴くということは基本的には主観的なものであり、主観的ということは、同じ音楽を聞いても異なる感情が生じるということを、音楽を流す立場の者は忘れてはならないと思います。つまり、聴く側と共有したいイメージを、流す側がしっかりと持った上で選曲や音量選択を行う必要があり、流す側のセンスが大変重要になってくるということです。

実は私は、公共の場に限らず一人で何かをしている時にもBGMを流すのは好きではありません。なぜBGMを好まないかについて、「聞く」と「聴く」の違いも交えながら、次号で述べさせていただきます。

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